チャ・セゲはどこから来たのか|ホ・ナムジュン出演作5本の観る順番【U-NEXT・Netflix】

チャ・セゲはどこから来たのか|ホ・ナムジュン出演作5本の観る順番【U-NEXT・Netflix】

ホ・ナムジュン出演作の観る順番|チャ・セゲの正体がわかる4作品と配信情報【U-NEXT・Netflix】

ホ・ナムジュン出演作5本を色鉛筆タッチで描いたアイキャッチ。左にチャ・セゲ、右に各作品のシーン


※この記事は『素晴らしき新世界』を最後まで観た方に向けて書いています。他4作品については、物語の結末に触れない範囲で書いています。


『素晴らしき新世界』のチャ・セゲを観終えたあと、私がまず調べたのは「この人、他に何に出ているんだろう」でした。


同じことを考えて、ここにたどり着いた方も多いと思います。


出演作を並べるだけの記事なら、いくらでもあります。でもこの記事では、少し違うことをしたいと思っています。


きっかけは、最終回のあとに読んだ、ホ・ナムジュン本人のインタビューでした。そこには、はっきりこう書かれていました。

この作品の脚本家は、前作『YOUR HONOR〜許されざる判事〜』での彼の演技を観て、チャ・セゲ役のキャスティングを決めたのだと。


制作側が探していた人物像について、彼はこう聞かされたそうです。


強い印象を持ちながらも、どこか柔らかさのある人物


そして本人は、こう受け止めています。出演作を観ながら、強いイメージだけでなくロマンスも表現できるかどうかを見てくれたのだと思う、と。


※出典:cinemacafe.net(2026年6月22日/記事提供=OSEN)


強い印象と、その下にある柔らかさ。この言葉を読んだとき、4作品を続けて観てきて感じていたことが、ようやく形になった気がしました。


ホ・ナムジュンは、「息子」を演じるときと「兄」を演じるときで、まったく違う俳優になる。そして、チャ・セゲは「息子」の完成形でした。


その意味がわかる順番で、『素晴らしき新世界』を含めた5本をご紹介します。


※ホ・ナムジュンってそもそも誰? どういう俳優なの?——という方は、先に彼の歩みをたどったプロフィール記事を読んでから戻ってくると、この先の話がもっと沁みると思います。



まず、あなたはセゲのどこに惹かれましたか


観る順番を決める前に、ひとつだけ。


『素晴らしき新世界』でセゲに沼った理由は、たぶん人によって違います。


「怒鳴る俺様なのに、なぜか憎めない」に惹かれた方 → STEP 2の『YOUR HONOR』から入ると、セゲの原型に出会えます


朝鮮時代パートの、静かなホ・ナムジュンが好きだった方 → STEP 4の『婚礼大捷』から入るのがおすすめです。韓服の彼が、もう一度観られます


暴力的な描写が苦手な方 → 『YOUR HONOR』は後回しにしてください。理由は本文で書きます


なお、この記事で紹介するU-NEXTの3作品は、すべて同じ登録で観られます。31日間の無料体験期間があるので、順番を気にせず好きなところから入っていただいて大丈夫です。


STEP 1|『その電話が鳴るとき』(Netflix)

phone-01.jpg『その電話が鳴るとき』チ・サンウを演じるホ・ナムジュン


まずはここから。追加料金はかかりません


『素晴らしき新世界』を観たということは、Netflixに登録されているはずです。


つまりこの作品は、今すぐ、1円も追加せずに観られます。


しかもここには、セゲとは正反対のホ・ナムジュンがいます。


作品データ


原題:지금 거신 전화는
放送:MBC/2024年〜2025年/全12話
配信:Netflixで独占配信(日本は2024年11月22日から)
主演:ユ・ヨンソク、チェ・スビン
ホ・ナムジュンの役:チ・サンウ


チ・サンウという役

『その電話が鳴るとき』ベンチでヒジュと向き合うチ・サンウ(ホ・ナムジュン)


やり手政治家のペク・サオンと、声を出せない妻ホン・ヒジュ。政略結婚で結ばれた仮面夫婦のもとに、ある日、脅迫電話がかかってくる——というサスペンス・ロマンスです。


ホ・ナムジュンが演じるチ・サンウは、精神医学科の専門医。そして、登録者20万人のミステリー系YouTuber。


ヒジュの大学時代の先輩で、彼女を陰ながら支え続けてきた相談相手です。


孤立していくヒジュにとって、サンウは本音を打ち明けられる数少ない相手として描かれます。この人がいるから、ヒジュはまだ壊れずにいられる。そういう位置に立っている人物です。


セゲとは、演技の方法が正反対です


ここが一番おもしろいところでした。


チャ・セゲは、感情を爆発させる人です。怒鳴る。声を張る。感情が表面まで出てくる。


サンウは、その逆です。


淡々とした口調のまま、相手の核心を突く。声を荒げないのに、言葉が届いてしまう。温度を抑えたまま説得する演技を、この人はできる。


同じ俳優が、同じ年に、正反対の方法で人を動かしている。


サンウの笑顔とセリフ回しについて

第2話の前半に、彼という人がまるごと出ているシーンがあります。


3年間連絡を絶っていたヒジュと、サンウが偶然再会する場面。ふたりはベンチに座って、言葉を交わします。


このとき彼は、手話を使います。


『その電話が鳴るとき』チ・サンウを演じるホ・ナムジュンの表情4カット


声を出せないヒジュに合わせて、手を動かしながら話す。そのときの表情、声の速さ、間の取り方——そのすべてが、チャ・セゲとはまるで違います。


セゲしか知らずにこの場面を観たら、きっと驚くと思います。同じ人が、こんなに静かな速度で人と向き合うのか、と。


そしてこのあと、ヒジュを警護している女性ボディーガードが、夫のペク・サオンにサンウのことを報告する場面があります。


そこで彼女は、サンウをこう表現します。


「優しげな顔立ち」


このシーンの彼の雰囲気は、本当にこの一言に集約されています。作品の中の人物が、まさにその通りの言葉で彼を言い当てている。


先ほど原題の話を書きましたが、届かない言葉の受け取り手という役割は、ここにも表れていると思います。


ヒジュの言葉を受け取るために、彼は自分の手を使う。


声を張らず、急かさず、相手の速度に合わせる。この人が「兄」の側にいる俳優だということが、この1シーンでわかります。


優しいだけの人ではありません


『その電話が鳴るとき』穏やかな表情でヒジュと並ぶチ・サンウ(ホ・ナムジュン)
そしてもうひとつ。サンウは「いい人」で終わりません。


彼は、犯罪や未解決事件に強い興味を持っています。ミステリーYouTuberという設定は飾りではなく、事件への執着として物語に効いてくる。


人の心を落ち着かせる医師でありながら、事件そのものには前のめりになる。この二面が、ひとりの中に同居しています。


頼れるけれど、どこか距離を保っている。


その微妙な線を、鋭い眼差しと柔らかい声で成立させているのが、この役の見どころだと思っています。


原題「지금 거신 전화는」の意味


余談ですが、原題にも触れておきます。


「지금 거신 전화는」は、「ただいまおかけになった電話は」。日本でもおなじみの、あの自動音声アナウンスの冒頭です。


邦題『その電話が鳴るとき』は、電話が鳴る側の言葉。 原題は、電話がつながらない側の言葉。


そしてヒロインのヒジュは、声を出せない設定です。


「かけたのに、届かない」という構造が、タイトルそのものに埋め込まれている。


そう考えると、届かない言葉を受け取り続けるサンウという役の意味が、少し変わって見えてきます。


▶ 『その電話が鳴るとき』をNetflixで観る


STEP 2|『YOUR HONOR〜許されざる判事〜』(U-NEXT)


ここに、チャ・セゲの原型があります


『素晴らしき新世界』を観て「怒鳴る俺様なのに憎めない」と感じた方には、この作品を強くおすすめします。


冒頭で書いたとおり、脚本家がチャ・セゲ役に彼を決めたのは、この作品での演技を観たからです。


『YOUR HONOR』キム・サンヒョクを演じるホ・ナムジュンの2カット


つまりここには、セゲの設計図があります。


作品データ


原題:유어 아너
放送:韓国ENA/2024年8月/全10話
配信:U-NEXTで見放題
主要キャスト:ソン・ヒョンジュ、キム・ミョンミン、キム・ドフン
ホ・ナムジュンの役:キム・サンヒョク


キム・サンヒョクという役

『YOUR HONOR』財閥の長男キム・サンヒョクを演じるホ・ナムジュン


判事ソン・パンホの息子が、財閥会長キム・ガンホンの次男を轢き殺してしまう。そこから始まる、法と暴力を武器にした父親同士の対決。


ホ・ナムジュンが演じるサンヒョクは、その財閥会長ガンホンの長男です。轢き逃げで死んだ次男の、腹違いの兄にあたります。


父の乱暴さと残酷さを、そのまま受け継いだ男。暴力と権力ですべて解決できると考えている。犯人を独自に捜し、自分のやり方で報復しようとする。


殴る、怒鳴る、脅す。フィジカルな芝居を、荒々しく演じています。


でも、ただの悪役ではありません


この役の核心は、父との関係にあります。


サンヒョクは、冷血な父ガンホンの平静を揺さぶる唯一の存在です。父にとって、彼はコントロール不能な爆弾でありながら、同時に愛情の対象でもある。


ガンホンは息子の暴走に怒りながら、完全には切り捨てない。


そしてサンヒョクの側は、その父の愛に依存しながら、愛され方に不満を持っている。


暴力に走るときの目つきの怖さと、父に認められたい瞬間にふっと出る弱い表情。この落差が、この役のすべてだと思います。


ただの悪役ではなく、壊れた家族の被害者。


サンヒョクの「冷徹さ」を感じた瞬間


サンヒョクの冷たさが出る場面は、いくつもあります。


そしてそのどれもが、目です。


表情の作り方、とくに眼の使い方が絶妙で、怖さすら感じます。声を張るからではなく、目が冷えているから怖い。


とくに私が息を呑んだのは、この3つでした。


第2話。 仲の悪い義理の母——父の後妻から、「本当はお前が殺したのではないか」と言われ、サンヒョクがキレるシーン。あのときの表情。
『YOUR HONOR』第2話、義理の母と対峙するサンヒョク(ホ・ナムジュン)


第4話。
弟サンヒョンの死に対する、激しい怒り。弟を殺した犯人に復讐すると、父ガンホンに告げる場面での表情の使い方。
『YOUR HONOR』冷徹な眼差しのキム・サンヒョク(ホ・ナムジュン)


第5話。
父ガンホンから、復讐は自分がやるからお前は手を出すな、と告げられる。それに対してサンヒョクが父と対峙するシーン。そして父に殴られたときの、あの挑戦的な冷たい目つき。
『YOUR HONOR』第5話、父に対し挑戦的な目を向けるサンヒョク(ホ・ナムジュン)


殴られて怯まない。むしろ挑む。あの目を見ていると、この男が何をされてきたのかが、説明なしに伝わってきます。


そしてこの場面、弟の復讐という一番大事な役目から、父に外されているわけです。


お前は関わるな、と言われている。


暴力で解決しようとする男が、その暴力の出番すら父から与えられない。彼が挑むような目で父を見返すのは、痛みへの反応というより、もう一度そこに立たせてくれという訴えに近いのかもしれません。


ただ、ひとりだけ例外がいます

そして——ここが大事なところなのですが。


第2話でサンヒョクがキレたとき、それを止めに入るのが妹のウンです。


そして、彼はおさまります。


このドラマで、サンヒョクが唯一穏やかに接する相手として描かれているのが、この妹なんです。


『YOUR HONOR』妹から彼を紹介され握手をするサンヒョク(ホ・ナムジュン)。妹とその恋人ホヨンの前で


誰に対しても目が冷えている男が、ひとりだけ、そうならない相手を持っている。


冒頭に書いた、制作側が探していた人物像を思い出してください。


「強い印象を持ちながらも、どこか柔らかさのある人物」


脚本家がこの作品で見たのは、殴る彼ではなく、妹の前で緩む彼のほうだったのではないか。


そう考えると、チャ・セゲへの道筋がまっすぐ繋がります。


この構造、どこかで見ませんでしたか


家族に十分に愛されなかった息子が、その渇きを別の形で外に出す。


チャ・セゲと、同じです。


セゲの怒鳴り声の下には、七歳のときの傷がありました。サンヒョクの暴力の下には、父に認められたいという願いがある。


違いは、その先です。


サンヒョクは、認められないまま怪物になります。セゲは、最後に愛を見つけて、そこに降伏します。


サンヒョクを観てからセゲに戻ると、あの降伏がどれほど遠い場所まで来た結果だったのか、見え方が変わってくるかもしれません。


正直に書いておきます


この作品、暴力描写がしっかりあります。


殴る、脅す、報復する。緊張感が続く重い作品です。『素晴らしき新世界』のラブコメ的な軽やかさを期待して入ると、面食らうと思います。


そういう作品が苦手な方は、STEP 4の『婚礼大捷』から入ってください。あちらは真逆のトーンです。



\脚本家がチャ・セゲを託した演技は、ここにあります。/

※31日間の無料体験があります(期間内の解約で料金はかかりません)


STEP 3|『100番の思い出』(U-NEXT)

『100番の思い出』主演3人、ハン・ジェピル(ホ・ナムジュン)とヒロイン2人


初主演作。ここが転機でした


作品データ
- 原題:백번의 추억
- 放送:JTBC/2025年9月13日〜10月19日/全12話
- 配信:U-NEXTオリジナルとして日本初・独占見放題
- 監督:キム・サンホ/脚本:ヤン・ヒスン、キム・ボラム
- 主演:キム・ダミ、シン・イェウン、ホ・ナムジュン
- ホ・ナムジュンの役:ハン・ジェピル


1982年のソウル。100番バスの車掌として働くコ・ヨンレとソ・ジョンヒ。ふたりの前に現れる高校3年生ハン・ジェピル。


友情と、初恋の三角関係を描いた青春ドラマです。


そしてこれが、ホ・ナムジュンの初主演作になります。


ハン・ジェピルという役


東仁百貨店の社長の息子。一見、何の悩みもない青年に見えます。


でも彼は、実母を早くに亡くしています。父の再婚相手である義理の母と、その子である妹セリとの4人暮らし。


そして父は、もともと短気な人です。実母が亡くなってからは、ジェピルに時折手を上げることもある。


その父に反抗的な態度を取り、不愛想で冷たそうな雰囲気をまとっている。それがこの青年の外側です。


ただし、ひとりだけ例外がいます。


妹のセリです。


『100番の思い出』妹セリに笑顔を見せるハン・ジェピル(ホ・ナムジュン)


彼女にだけは、何とも言えない笑顔で接する。ジェピルにとって、家の中で唯一の心のオアシスになっているのが、この妹なんです。


……この構造、さっき見ませんでしたか


暴力的な父。反抗的な息子。そして、妹の前でだけ緩む顔。


『YOUR HONOR』のサンヒョクと、まったく同じです。


サンヒョクにとってのウン。ジェピルにとってのセリ。


どちらの作品でも、この人は「父に傷つけられた息子」と「妹の前でだけ柔らかくなる兄」を、同じ人物の中で演じています。


制作側がチャ・セゲに求めた「強い印象を持ちながらも、どこか柔らかさのある人物」は、この時点ですでに二度、彼が形にしていたものでした。


ぶっきらぼう、ではありませんでした


この作品について、こんな評をよく見かけます。


「ぶっきらぼうで無愛想な外面と、好きな相手にだけ見せる極甘な一面のギャップが魅力」


私も最初は、そう思って観ていました。


でも、見返してみて、少し違うと感じたんです。


『100番の思い出』ソ・ジョンヒに思いを伝えるハン・ジェピル(ホ・ナムジュン)


前半に、心に傷を抱えるソ・ジョンヒに惹かれたジェピルが、告白をするシーンがあります。


あの場面の彼から、「愛なんて興味がない」という感じは受けません。


むしろ、まっすぐです。自分の気持ちを、そのままジョンヒに伝える。ぶっきらぼうの鎧が剥がれるのではなく、最初から鎧など着ていなかったように見えます。


不愛想なのは、父に対してだけだったのかもしれません。このシーンは、なかなか素敵です。


そして、7年後この作品は、前半と後半で時間が飛びます。


ジェピルの高校時代と、コ・ヨンレ&ソ・ジョンヒの車掌時代が前半。ある事件を境にした、7年後の姿が後半です。


後半では、ジェピルとヨンレの関係が親密になっていきます。


もともと彼を好きだったヨンレは、思いを秘めたまま、7年前と同じように彼のそばにいる。


『100番の思い出』7年後、コ・ヨンレに本当の気持ちを打ち明けるハン・ジェピル(ホ・ナムジュン)


そしてジェピルは、この7年のあいだに生活環境が大きく変わっていました。その中で、自分が知らないうちに彼女に支えられて生きてきたことに気づく。


自分の本当の気持ちに、そこで初めて気づくんです。


そして、ヨンレに告白する。


ここのホ・ナムジュンは、とても穏やかで静かです。


でも、その静けさが深い。声を張らずに、気づいてしまった人の顔をしている。輝きを放っている、という言い方をしたくなる場面でした。


初主演としての彼


この作品を語るとき、主演2人の存在は外せません。


コ・ヨンレ役のキム・ダミは、『梨泰院クラス』のチョ・イソのような尖った生意気さとは正反対の役です。素朴で控えめ、芯がしっかりしていて、友達や兄弟のことを一番に考える優しさにあふれた人物。


ソ・ジョンヒ役のシン・イェウンも、心の傷を抱えながら明るく強気にふるまう難しい役を、うまく演じています。


『100番の思い出』100番バスの車掌を務めるコ・ヨンレとソ・ジョンヒ


そしてホ・ナムジュン自身が、インタビューで最高のコンビネーションだったと語り、2人の演技から学ぶことが多かったと振り返っています。※出典:navicon(https://navicon.jp/news/93398/


彼の静かな演技は、2人の感情豊かな芝居があったからこその構図が、この作品ではわかります。


このドラマにホ・ナムジュンのナチュラルな魅力が存分に出ているのは、主演2人との絶妙なケミがあったからこそだと思います。


脇も手堅いです。ヨンレの母マンオク役に名バイプレイヤーのイ・ジョンウン。ジェピルの父である東仁百貨店社長役に、『根の深い木』『アイリス』でおなじみのユン・ジェムンが出演しています。
『100番の思い出』ヨンレの母マンオク役イ・ジョンウンと、ジェピルの父役ユン・ジェムン


また、「愛の不時着」でおなじみのキム・ジョンヒョン、若くてハンサムなバス運転手でイ・ジェウォンなど、味のある役者たちが勢揃いで、主演3人をしっかりと支えています。


放送終了後のインタビューでホ・ナムジュンは、この作品を約8ヶ月かけて撮影したこと、終わってしまう物足りなさを繰り返し口にしています。


そして結末に満足しているかと問われて、こう答えていました。


自分の演技に満足したことはない


ただ、表現しなければならない部分はできたのではないか、とも続けています。


自己評価が厳しいまま、それでもやるべきことはやったと言える。初主演を終えた俳優の言葉として、私はこれがとても好きでした。


※出典:Kstyle(2025年12月7日/Newsen)


正直に書いておきます(大事なところです)


この作品、セゲのテンポで入ると、確実に面食らいます。


理由は3つあります。


①:1980年代のバス会社の日常描写に、かなりの尺を割いています。早朝4時の国民体操、車内での客の奪い合い、労務課との緊張関係。当時の労働現場が丁寧に再現されているぶん、ロマンスの進展はゆっくりです。


②:派手な事件が起きません。淡々と進みます。テンポの良い現代ドラマに慣れていると、物足りなく感じる可能性があります。


③:1993年生まれの彼が高校生を演じているので、制服姿には少しアンバランスさがあります。


『100番の思い出』学生服姿で歩くハン・ジェピル(ホ・ナムジュン)


これは実際に、放送当時「没入の妨げになる」という声が出ていました。


そして本人が、それに答えています。


制服のフィッティングの段階で当時の資料を集め、父親のアルバムまで見たそうです。あの時代の人たちは皆、今より成熟した雰囲気だった。だから大丈夫だろうと思っていた——けれど、そう感じさせてしまったのなら申し訳ない、と。


外見については深く考えず、自分にできる演技のほうに集中した。できることは食事の管理と運動くらいで、それ以上は自分でどうにかできる部分ではなかった。そういう趣旨のことも話しています。


※出典:Kstyle(2025年12月7日/Newsen)


私は、この答え方に少し驚きました。


言い訳もせず、開き直りもしない。調べるだけ調べたうえで、それでも届かなかった部分は認める。


——ここまで書いておいて、それでもこの作品をSTEP 3に置いているのは、理由があります。


大ヒットしたわけでも、大きな話題になったわけでもないドラマだと思います。


でも見返してみて、これは隠れた名作だと言いたくなりました。


1980年代という時代の構成、その時代の格差や階級社会、人々の生き方。そして出演者たちの心の葛藤や機微が、丁寧に描かれています。派手さがないぶん、細かいところまでしっかりと作り込まれている作品だからです。


そして何より——


『YOUR HONOR』の冷徹なホ・ナムジュンでも、『素晴らしき新世界』のチャ・セゲでもない。


彼のナチュラルな魅力があふれる姿を観られるのが、この作品です。ファンには、ぜひ観てほしい1本です。


\冷徹でも、俺様でもないホ・ナムジュンは、ここにいます。/

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STEP 4|『婚礼大捷〜愛結ぶ二人〜』(U-NEXT)

『婚礼大捷』韓服姿の従事官チョン・スング(ホ・ナムジュン)
韓服のホ・ナムジュンが、もう一度観られます


『素晴らしき新世界』の朝鮮時代パート、好きでしたか。


私はとても好きでした。そして同じ気持ちの方には、この作品を強くおすすめしたいです。


作品データ
原題:혼례대첩(The Matchmakers)
放送:KBS2/2023年/全16話
配信:U-NEXTで日本初・独占配信(2024年3月8日〜)
主演:ロウン、チョ・イヒョン
ホ・ナムジュンの役:チョン・スング(従事官)


科挙に最年少で首席合格しながら、王女との縁談で人生が狂ってしまったシム・ジョンウ。彼が"仲人の神"と呼ばれるチョン・スンドクと組んで、三姉妹の結婚相手を探すことになる——というラブコメ時代劇です。


宮中政治や階級差が背景にありますが、トーンは軽妙。楽しく観られる作品です。


非婚主義の、頑固な従事官

『婚礼大捷』チョン・スング(ホ・ナムジュン)と主役ジョンウ、スンドク


ホ・ナムジュンが演じるチョン・スングは、スンドクの兄で、従事官を務める文官です。


非婚主義者で、頑固者。真面目で落ち着いていて、妹の縁談には口うるさい。でも、根は優しい兄です。


そしてこの役、「息子」ではなく「兄」なんです。


家族に傷つけられた過去はありません。傷を怒りに変えることもしません。


声と表情と韓服の、3拍子


時代劇の文官という役に、この人の柔らかく低めの声と、抑えた芝居がとてもよく合っています。


現代物で見せる暴力性やクセの強さとは違う、安定感と包容力。


正直に言うと、私は時代劇のホ・ナムジュンがいちばん好きです。声と表情と韓服が、きれいに揃っている。


非婚主義が、崩れていく


『婚礼大捷』チョン・スング(ホ・ナムジュン)とチョン・サムスン


見どころは、彼が少しずつ心を開いていく過程です。


最初は「結婚などしない」と言い張っていた男が、三女との関係のなかで変わっていく。視線の置き方、間の取り方、さりげない優しさの積み重ね。


そして最終的には、かなり積極的なところまで行きます。


サブカップルでありながら、物語のなかで確かな役目を担っている。ロウン演じるジョンウのコミカルさが笑いを引き受けるぶん、彼の従事官は「落ち着き」と「可愛げ」で空気を整える役割を果たしています。


『YOUR HONOR』のような暴力的な作品が苦手な方には、こちらから入っていただくのがいいと思います。



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そして、『素晴らしき新世界』へ戻る


4本を観てから、もう一度チャ・セゲを見てみてください。


たぶん、違って見えます。


『素晴らしき新世界』朝鮮時代パートのチャ・セゲ(ホ・ナムジュン)


分類 作品 表に出るもの その下にあるもの
息子 YOUR HONOR キム・サンヒョク 暴力・冷血 父に認められたい弱さ/妹ウンの前でだけ穏やか
100番の思い出 ハン・ジェピル 父への反抗、不愛想 実母を失った傷/妹セリにだけ見せる笑顔
素晴らしき新世界 チャ・セゲ 怒鳴る俺様 七歳の傷
その電話が鳴るとき チ・サンウ 落ち着いた優しさ 事件への執着
婚礼大捷 チョン・スング 非婚主義・頑固 開いていく心


こうして並べてみると、はっきりします。ホ・ナムジュンが「息子」を演じるとき、そこには必ず、うまくいかない父がいます。そして必ず、その男が柔らかくなる相手がひとりだけいる。


サンヒョクにはウンが。ジェピルにはセリが。そしてセゲには、ソリが。


観ている側は、表に出ている冷たさや怒りを見ながら、その例外のほうを無意識に受け取っています。だから、怒鳴られているのに嫌いになれない。


チャ・セゲの「憎めなさ」の正体は、たぶんそこにあります。


監督も、演じたホ・ナムジュン本人も、そう設計していましたこれは私の思い込みかもしれない、と書きながら思っていたのですが、心強い言葉を二つ見つけました。


ひとつは、演出を手掛けたハン・テソプ監督の言葉です。

セゲという人物の魅力は、「愛など金になるのか」という冷めた価値観が、どれだけ自然に、そして魅力的に崩れていくかにかかっていた——と語っています。


監督にとってセゲの見どころは、冷たさそのものではなく、その下から出てくるものだった。


そしてもうひとつ。演じたホ・ナムジュン本人が、チャ・セゲの魅力についてこう説明しています。


少しダメな部分がありながらも、ふとした瞬間に男らしさが見える。そのギャップこそが魅力になると考えて演じた、と。


表に出ているものと、その下にあるもの。


制作側も、演じた本人も、そこを狙っていたわけです。※出典:wowKorea(2026年6月30日)/cinemacafe.net(2026年6月22日)


そして、サンヒョクとセゲの違い

『素晴らしき新世界』現代のチャ・セゲ(ホ・ナムジュン)と韓服姿のソリ(ダンシム)


ここまで書いてきて、最後にどうしても並べたい二人がいます。


サンヒョクは、父に認められたいと思いながら、怪物になってしまった男でした。 

セゲは、愛が乏しいまま大人になって、最後に愛を見つけて、その愛に降伏した男でした。


どちらも、じゅうぶんに愛されなかった息子です。違うのは、探していたものが手に入ったかどうか。


サンヒョクが最後まで求めていたのは、父の承認でした。


そしてそれは、ついに与えられません。求めれば求めるほど暴力に傾いていき、彼は自分が求めていたものから遠ざかっていきます。


セゲが最後に手にしたのは、承認ではなく、愛でした。


七歳のセゲが学んだのは、「弱さを持たない」ということでした。弱みを見せれば踏みつぶされる。だから鎧を着る。


降伏とは、その鎧を自分から脱ぐことです。弱さを持たないと決めた男が、自分から白旗を上げる。あの言葉が甘さだけで終わらないのは、それが七歳の誓いを解く行為でもあったからだと思います。


——ここまでが、2024年のサンヒョクと2026年のセゲを並べて、私が受け取ったものです。


同じ痛みを抱えた息子を、二度演じた。一度目は救われず、二度目は救われた。


そう見るのは読みすぎかもしれません。でも、脚本家がサンヒョクを観てセゲを託したという経緯を知ったあとでは、私にはどうしてもそう見えてしまうんです。


チャ・セゲというキャラクターそのものについては、別の記事でもう少し詳しく書いています。よろしければ、そちらもぜひ読んでみてください。


そして、もう一度チャ・セゲに会いに行く前に。


あの「怒鳴る俺様なのに憎めない」がどう作られていたのかを、セゲひとりに絞って書いた記事があります。4本を観たいまなら、きっと深くうなずいてもらえるはずです。


▶ [チャ・セゲはなぜ沼るのか|『素晴らしき新世界』ホ・ナムジュンの「怒鳴る俺様なのに憎めない」の正体]



配信情報まとめ


作品 配信サービス 話数 状態
その電話が鳴るとき Netflix 全12話 完結
YOUR HONOR〜許されざる判事〜 U-NEXT(見放題) 全10話 完結
100番の思い出 U-NEXT(独占見放題) 全12話 完結
婚礼大捷〜愛結ぶ二人〜 U-NEXT(独占) 全16話 完結
素晴らしき新世界 Netflix 完結


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韓ドラ好きブロガーyayaのプロフィール

この記事を書いた人

yaya|韓国ドラマ歴18年。「冬ソナ」がきっかけで韓国のドラマ・文化に魅了され、今ではOSTや俳優情報まで幅広く発信中。プロフィールを詳しく見る

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